「認知症は介護費用が大変」――もう聞き飽きた、という方も多いでしょう。けれど本当に怖いのは、介護費用そのものではありません。認知症によって起きる「お金の管理の崩壊」こそが、資産形成にとって最大のリスクなのです。
たとえば、国民生活センターには、認知症の高齢者が詐欺に遭ったり、高額な買い物を繰り返したり、定期預金を何度も解約していたという相談が毎年数千件寄せられています。特に初期段階では本人に自覚がないまま資産が減っていくため、家族が気づいたときには手遅れになることも。
国立研究開発法人・国立長寿医療研究センターの調査によれば、認知症の前段階である「軽い認知機能の低下」がある人の約8割が、金銭管理の能力に問題を抱えていると報告されています。つまり、「まだ大丈夫」とは言えない状況なのです。
さらに厚生労働省の資料によると、認知症が原因で成年後見制度の利用者は年々増加しており、財産管理が個人では困難になる実態が明らかになっています。
ここで考えたいのは、親や配偶者が認知症になったとき、預金や不動産、証券資産はどうなるのか、という点です。実際には、銀行口座が凍結されたり、不動産が売れなくなったり、遺産分割が進まなくなったりといった問題が一気に起こる可能性があります。
このような資産の凍結リスクを避けるには、事前の仕組みづくりが必須です。たとえば、家族信託や任意後見の制度を活用する、証券口座の構成を見直す、現金と投資の割合を調整しておくといった備えが重要です。
そしてもう一つ大切なのが「お金の見える化」。もしものとき、家族が何も知らなければ、支援どころか混乱しか生まれません。資産の一覧、口座の所在、毎月の支出を共有しておけば、「知らなかった」「引き出せなかった」といった事態を避けられます。
認知症への備えとは、施設選びの話ではなく、「家計の戦略」です。これは高齢者だけでなく、四十代・五十代の現役世代にこそ必要な「資産防衛」の行動なのです。
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